店じまい・店びらき ~閉店のヘキレキ~

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2006年 11月 02日

ダンスと権力

世を挙げての社交ダンスブームである。
テレビでは社交ダンスだけのレギュラー番組があるくらいだし、
愛好者の人口は100万人とも、500万人とも伝えられている。

かたや若者はといえば、ヒップホップダンスやレゲエ、ブレイキンといったダンスにいそしんでいる。
しかし専用のダンススタジオを何時間も借りるには、お金のない若者にとっては痛い。
そこで彼らはストリートに繰り出す。

だが先日、こんな貼り紙を見つけた。
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池袋西口、東京芸術劇場の裏口にある貼り紙である。
体を動かすには十分すぎるくらい広いスペースが、そこにはある。
また、ご覧のようにガラス張りになっており、そこに映る自分たちの姿をチェックできる。
ちょうど、スタジオにある鏡の役割を果たしているのである。

ストリートダンスに興じる若者は往々にして、夕方から夜にかけてこうしたフロアで
踊る。人目はあまり気にしていないらしいが、集中して踊るにはこういった時間帯のほうが
いいのだろう。また人通りが少ない細い通り沿いにある場所がいいのだろう。

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しかし、劇場側は「ご遠慮下さい」だそうだ。
若者はもしかしたら「芸術劇場」という響きで
許してもらえると思ったのだろうか。








とにかく、ダンスは「ご遠慮下さい」なのだそうだ。
ただし、「ダンス」の文字が大きく、「ご遠慮下さい」が、しおらしいほど小さいのは
どうしてだろうか。

とりあえず若者には、「ダンス」という字をまずは見てほしかったので、こう書いた
のだろうか。ダンスをしている人にとっては、確かに思わず目が行くであろう。


それにしも・・・「ご遠慮下さい」のポイントはやっぱり小さすぎるのだ。

そうだ!
あまり大きくすると、若者の反感を買う恐れがあるため、極力小さくして、

「ごめんなさいね、本当は明日のダンスシーンを担う若者に目いっぱい踊ってほしいんですが、
 ここは公共施設ですし、もしかしたら小うるさい近隣住民のご迷惑になる可能性も
 なきにしもあらずなので、ご勘弁くださいね。いえ、私も応援したいんですけど、
 とりあえず、、、ご遠慮願えますでしょうか?」
と、そっと伝えるためなのだろう。


いや・・・



やはりこの「ご遠慮下さい」の字は小さすぎる。
もしかしたら、最初「ダンス禁止」と書こうとしたのではないだろうか?
それだったら合点がいく。
この「ダンス」という文字の大きさより数ポイント小さくして書けば、
「ダンス禁止」もうま~く、このA4の紙におさまる。

しかし、ここを「ダンス禁止」と書いたら、
それこそ若者から「文章が高圧的に思われて」反感を買い、
逆ギレした若者がもっとここに押し寄せ、さらに大音量で踊りはじめないとも限らない。

なんなら、「ここは“東京芸術劇場”なのにダンスという立派な文化は排除するのか!?」
とデモ行進をやらないとも限らない。

さらに、東京芸術劇場のすぐ近くには西口公園がある。いわゆる
ウエストゲートパークと呼ばれている場所だ。
ここの少年たちに頼んで、劇場を襲撃しないとも限らない。


今度は仮に、「ダンスおやめ下さい」という文章にしたとする。
しかしこれも若者から見れば、
「『下さい』と丁寧語で言っているけどよ~、結局は『辞めろ』ってことだろ!?」と思われて、
これまた騒ぎになりかねない。


そういう意味では、
「ご遠慮下さい」しかないのかもしれない。
「ご遠慮下さい」というのは、何て都合のいい言葉なのだろう。
自分もあまり傷つかないし、相手にも必要以上の怒りをもたらさない。
日本語の言葉というものは繊細で美しいが、一方で、卑怯である。


ヒップホップダンスもレゲエダンスも、差別や抑圧から立ち上がろうとする人々のエネルギー
から生まれたものだった。

今夜も、スタジオ代が高くて借りられない若者たちは、ダンス場所を排除しようとする
そういった権力と戦い、ぶつくさ言いながら、フロアをストリートに求めるため、
都内をさ迷うのであろう。
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by misejimai | 2006-11-02 16:23 | だって!


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