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店じまい・店びらき ~閉店のヘキレキ~

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2006年 05月 27日

「今、どこで買っても困らないでしょう」

今日の閉店貼り紙は、熊本県にあるレコードショップ、マツモトレコード。
「今、どこで買っても困らないでしょう」_e0030939_19435070.jpg



















下通り(しもとおり)と言われる、熊本の中核的な商店街の一角に佇む。
創業は昭和36年。45年の歴史を誇る、まさに街の顔だ。
もちろん、「熊本のレコード屋さん」と言えば、真っ先に「マツレコ」が出てくるほど有名だった。
また、アーティストたちにも名が知られていた。

25年前、父親の後を継いで2代目オーナーになった松本光一さんが、マツレコを
さらに変えた。

ライブホールを作り、メジャー・インディーズ問わずアーティストを呼んでのライブ。
「ユーミンとサザン、矢沢永吉以外はほとんど来た」(松本さん)
ステージには年間、60~70組のアーティストが出演。B’zにミスチル、
最近では平井堅やオレンジレンジなどもステージに立った。

さらに、PVや貴重な映像を上映するビデオコンサート。
サインやポスター、ステッカー、生写真などの特典。

そもそも立地場所が良かったとか、
当時はレコード店が絶対的に少なかったといったアドバンテージもあったが、
そうしたことにあぐらをかかず、専門店としての深い知識と、接客の良さで
客を増やしていった。
マツレコでレコード、CDを買う行為そのものが一時期の熊本の人々の共通認識であり、
通過儀礼だった。



以下はオーナー、光一さんとの話。

Q閉店の転機となったのは何ですか?
 タワレコの進出と、Windows 98の発売だね。CDが焼ける時代になった。

Q閉店に際し、同業者からは何と言われますか?
 もったいない、なんで続けないの?と言われます。
 でもみんな、閉店が正しいとは思っていない。間違ってはいないんだよ。

Q「間違っていない」というのはどうして?
  だって、どう考えても、個人のレコード屋に将来はないでしょ。悪い材料しかないんだから。
  (閉店を決めた)判断が早かっただけ。遅かれ早かれ、瀕死の重傷になる。
  その前に幕引きしようと。

Q今までマツレコを愛してくれたファンに一言
  お世話になりました。思っていた以上に店を愛してくれて、ありがとう。
  
Qこれから音楽を愛する人に一言
  今や音楽を会話の情報ツール、カラオケの練習のために聴くようになった。
  アーティストが好きだから、じゃなくて「音」でしか聴いていない。
  オレンジレンジの音楽聴いてる人だって、メンバーの名前知らないでしょう。

「今、どこで買っても困らないでしょう」_e0030939_19393052.jpg
閉店は大型店舗の
せいではない
みんなの音楽の楽しみ方が
変わっただけ
タワレコとて今や赤字
レコ屋の下火
ダウン・ロードの時代



※写真は友達の熊本在住のお知り合いに頼んで撮っていただきました。
 光一さんとのお話は了承の上、電話で僕がしました。
 あわせてお礼申し上げます。

by misejimai | 2006-05-27 19:45 | レコード屋さん


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