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店じまい・店びらき ~閉店のヘキレキ~

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2006年 05月 01日

さよならの美学

さよならの美学_e0030939_2144585.jpg今日の店じまいの貼り紙は文京区
根津。
藍染大通りの長屋の一角にある
貸本屋さん、なかよし文庫。

これだけの長文はこのブログ史上最長である。
日本人が好き好む言葉「諸般」で済むところを、いさぎよく引き際を述べているあたり、
僕は1つの美学だと思っている。

さて、「なかよし文庫」は今では珍しい貸本屋さんである。
昭和30年代の日本のサブカルチャー「貸本屋」さん。
最盛期には、全国に3万店あったという。




根津は父親が東京転勤のときに住んでいた町だ。
そこで僕もよく訪れたことがあるが、地元の結束はあるのによそ者にも優しい。
緑も家の一軒一軒にあふれている。
どっぷり「下町」というわけではないけれど、隣り近所の人の顔がはっきりと
見える町だったように思う。

根津神社の門前町、花街、商業と職人の町。
時代によって表情を変えてきた路地裏の町、根津。
そんな昔ながらの木造家屋が時代の波に呑まれている。


さよならの美学_e0030939_23271416.jpg「なかよし文庫」。店内に入ったことは一度も無いのに、何だか笑顔が思わずこぼれてしまう店名である

貸本屋は、大人と子供という、1対1の絆で結ばれている
そう、「貸す」「借りる」という単純なこと
だけど、大事な信頼関係を、店主のおばあさんと子供たちはずっと守って育んで
来た

でも、信頼関係を保つのには体力がいる
「歳には克てない」。おばあさんは貼り紙でそう漏らしている
一時、長期休業をしていた頃もあった
という
1つまたひとつなじみの同志が暖簾を
下ろす度に、
そのたびに、気持ちを奮い立たせていたのかもしれない



いつか古書店として再出発したときも、店名だけは変えて欲しくない


by misejimai | 2006-05-01 23:44 | 貸本屋さん


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