カテゴリ:お豆腐屋さん( 1 )


2006年 04月 28日

豆腐が入っている水は冷たい

e0030939_21302653.jpg今日の店じまいは、板橋区本町にあるお豆腐屋さん。
フジテレビの元アナウンサー、有賀さつきさんが「一日中、山道」という伝説の読み間違いをした
「旧中山道」沿いにある。


この読み間違いもあながち間違っていない
確かに一日中、山道なのだ
なぜそのことが分かるかというと、この旧中山道をずっと歩くと、僕の故郷に行き着く
からだ
ふと、このまま歩いて帰りたくなった

そして、僕の家の隣が、奇しくもお豆腐屋さんだった
僕は「お豆腐買ってきて」と母に言われると、銀色のボウルを
渡された
左手に100円を握り締めた僕は、ボウルと一緒に買いに行くのだ

「お豆腐一丁ください」

母屋とは少し離れた場所に、豆腐を作る小屋がある
こじんまりとして、ひんやりとして、ちょっと薄暗いところに、
腰が90度曲がったおばあさんがいつもいた

おばあさん「よく気が利くねぇ」
僕「ふふふ・・・」

おばあさんの手は、皮と骨ぐらいしかないほど痩せ枯れているが、力強くもあった
その手で流し台にプカプカ浮いている豆腐を、ひょいっとすくい、僕が渡したボウルに
入れてくれる
柔らかい豆腐を難なく入れるその技に、子供心に感心していたものだ

そして、何といっても、豆腐が浮いている水
あの水は透き通って、この世のものとは思えない透明感だった


一度だけ、僕はその水に手を入れたことがあった
いつものようにお遣いに頼まれて店にやってきたとき、小屋の戸が少しだけ開いていて、
思わず入ってしまったのだ

それに気づいたか、母屋からおばあさんがやってきた
背後の気配にびくっとした僕は水に手を入れたまま動けなくなった

そのとき、おばあさんが言った言葉が忘れられない
「ふふふ、冷たいでしょう。豆腐が美味しくなるには冷たい水が一番なの」

怒ることもなく、優しく僕の手を、腰に巻いてある、農協の手ぬぐいで拭いてくれた

今は、その店もおばあさんの死によって絶えてしまい、小屋も取り壊されている

そんなことを思い出した春の夜


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僕に子供ができたとき、伝えてやりたいことがある
「作りたての豆腐は美味しいぞ!」ってさ

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by misejimai | 2006-04-28 21:48 | お豆腐屋さん