店じまい・店びらき ~閉店のヘキレキ~

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カテゴリ:本屋さん( 6 )


2009年 06月 07日

おめでとう

今日の店じまいは、
江東区北砂にある本屋さん、渡部書店。
砂町銀座商店街の入り口にひっそりとあった。
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店を閉めることを知ったお客さんからこんなことを言われたのだそうだ。
「そんなに長くやってたの?いま辞めて正解だったんじゃない?おめでとう」
今までいろんな店を見てきて、
「お疲れ様」とか「ありがとう」とか「残念」「辞めないで」という声はあったが、
「おめでとう」という言葉を聞いたのは初めてだった。


















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「いま帰った長女がよちよち歩きしていたときから始めたのよ」と言うのは店主の
おばあちゃん。
しかし、今月6月28日、創業52年を迎える前に店を閉めた。

おばあちゃんは旅が好きだった。近所の友達と行くのだという。
「兼六園とか、福島とか、伊豆とか。それとか金毘羅さんにも行ったわね」

おばあちゃんは、旅行するとき、自分で荷物を持たないと旅をした気分にならないと
いう。
荷物を友達に持ってもらう、なんてことはしたくない。
まだ体力が残っているうちに旅行をして想い出をもっと残したい。
跡を継ぐ者もいないし、店をたたむという結論に達したという。

多くのお客さんに、言葉の海を泳ぐ旅を存分に楽しんでもらったあとは、
自分で旅行しに行くというわけだ。

「今後はどこに行きますか?」
との質問に
「まだ考えてない。とりあえず明日ラジオ体操する」と答えた、おばあちゃんだった。
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by misejimai | 2009-06-07 19:29 | 本屋さん
2006年 12月 08日

知識に飢える

今日の店じまいは、
池袋駅東口の新栄堂書店。

閉まったのは9月10日である。
僕が予備校時代によく通った本屋さんである。
大体が、ここはエレベートもエスカレーターもない。
あるのは階段だけである。
自分の脚力で本を探すということで、知力と体力が蓄えられた。
ただし、階段の段差の部分に、「昇降料10円」と書いてあった。

最近は池袋に行く機会もだいぶ減ったが、
階段をあがっていたときの息切れに、年の重なりを感じていた。

若い頃ならどんなに階段をのぼっても顔をまっすぐ向いていられたのが、
いつしか、うなだれて階段しか見ていない自分に

昭和21年から60年だという。
今では考えられない「知識に飢える」ということがかつてあった。
そんなかつての日本人相手に、この本屋さんは戸板を並べ、よしずを張り、
トタンで風雨をしのぎながら本を売っていた。

今やどうだろう。
知らなくてもいいことばかり増えてしまい
知るべきことが周りの雑音に埋もれている
そして今日も電車の7人がけの乗客全員が携帯電話を見ているという
薄ら寒い光景を目の当たりにして吐き気がした。


最終日の閉店時、不意に店内放送が流れたという。
「60年間ありがとうございました、又お会いする時は、熱く本を語りましょう」
店長の声だった。

さようなら
4階の洋書のコーナーにあこがれて
いつか読めるようになりたいと思っていたのだが。。

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このボードに
新しい書名が
書かれることはない
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by misejimai | 2006-12-08 02:21 | 本屋さん
2006年 05月 03日

戸川書店さん / 今まで3行 / ありがとう

e0030939_23111988.jpg今日の店じまいは、恵比寿にある古書店・
戸川書店。
開業は昭和29年。50年以上、恵比寿で
根を張ってきた。
歴史、考古学、美術、宗教。
古いものでは約400年前の古書もあるという。

しかし、この戸川書店の名を一躍有名にしたのは、
店の2階・3階の細長いウィンドウ部分を使って、
店主が毛筆で書いた垂れ幕にも似た長半紙だ。

駅の西口、右の交差点で信号待ちをしている
ときに飛び込んでくるその3行のメッセージは、
2代目店主・戸川茂一さんが3年前から始めた
もの。


決して達筆でもなかった。
3行に納まりきらず、最後の行が
もの凄い小さい字で詰め込まれていたこともある。

でも、本のあり方を示唆していた。
社会に政府にチクリと物申していた。
時には生き方を啓蒙していた。
そんな親父さんの一言を見るたびに、
そのときそのときの自分に叱咤激励しているような気がしていた



・生涯二〇,〇〇〇冊 / 織りなす知識の衣を / 身に纏いませう

・待つ心憧れる心 / ときめく心焦がれる心 / 皆本の中に棲んでます

・今の児も昔しの児も / ずっと昔しの児の書いた / 本も讀みませう

・嫌らしい本は有り / ませんが、些とも / 判らない本は在ります

・お父さん読んでますか / お母さん読んであげてますか /倅(せがれ)読め

・本を目で齧り(かじり) / 本を頭で咀嚼し / こころの糧と為す

・義務は為政者のために / 権利は民のために / 憲法は平和のために

・毒ニモ薬ニモナラナヰ / 本ヲ読ムヨリ毒カ薬ニナル / 本ヲ読ミマセウ
 
・超高速の電脳社會 / 短絡したら無能社會 / 端からゆっくりでは

・エイズ癩拉致道路外交 / 一つと解決できていない / 〒だけがなぜできる

・無関心無投票は / 國家腐敗の元兇 /眼を開け今を見よ

・年賀はがき始めました


そしてある日、こんなメッセージが貼られていた
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閉店ではないらしい
移転である
同じ恵比寿にある別のビルの1室での再始動
新店舗は、あらかじめインターネットで目録を検索してから店に
出向くという、「予約型」古書店になるという













さて、その1つ前の書が、下。
あるブロガーの方から提供してもらった。
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先日のなかよし文庫もそうだが、
改めて、本を読んでみようと思った
そんな3行だ

もうこの書の新作が見られなくなると思うと淋しい
でも時代の波だなんて、一言では片付けたくは無い
誰かこの書だけでもいいから継いで欲しいな






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3枚目の画像を提供してくれたjuriさんのブログ。
ときめく心をお持ちの女性による、感性あふれるブログです。ありがとうごさいます。
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by misejimai | 2006-05-03 23:51 | 本屋さん
2006年 04月 25日

欲望とともに去りぬ

e0030939_205673.jpg今日の店じまいは、東京・恵比寿駅東口から徒歩2分、浜田山書房。

この店の奥に行くと男子が好むマニアックなエッチ雑誌が
ひしめいていた
立ち寄ると必ず、1人の同志がいた
名前も知らない見ず知らずの他人なのに
本を繰りながら
同じ時間、そして同じ欲望を共有している

そして今日はどんな本を買うか横目で互いに観察するのだ
時には目で牽制しあうこともあった・・・「それは外れだ」と

ようやく品定めが終わると、
お堅い本2冊の真ん中に挟んでレジへ持って行くのだ
それが2人の常だった

だがもう会うこともない
不埒な想い出が詰まった本屋さんだった





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by misejimai | 2006-04-25 21:06 | 本屋さん
2006年 03月 15日

「無期限営業停止」の意味するもの

今日の店じまいは、神田古書街にある本屋。
「無期限営業停止」とある。
なぜ「閉店」ではないのか。
黒く塗られ、また白く貼られているテープの下にはどう書かれていたのか。
僕は思いを巡らせた。


e0030939_22171518.jpg「ランダムウォーク」 和ものと洋物が
入り混じった本屋で有名だ
その店に一体何が起きたのか
バイリンガルの「天才バカボン」が、
「マンガ」文化をこよなく愛する外国人にとってはあまりにナンセンス過ぎて不評だったのか
それとも、チェーン店化が、戦前から
ずっと根を張り、一筋に営んでいる本屋から執拗なまでの嫉妬と攻撃を受けたのか





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果たして答えは・・・


戦前の建築で建物の老朽化ということだった。
経営難などで店を閉めたのではなく、建物の老朽化によって営業停止に追い込まれた
ということらしい。
誰か店内を撮影していた人はいないものだろうか。きっと古めかしいけど温かい空間
だったのだろう。何か続けていく手立ては無かったのか。
古いものを全て文化財にしろとは言わないが、もともとこういうところに日本人の美意識が
あったのではなかったのか。
僕はさびれ行くものに美しさを感じてこんなブログをやっているのです。
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by misejimai | 2006-03-15 22:35 | 本屋さん
2005年 10月 02日

棚卸しかのお知らせかと思ったら、閉店の貼り紙だった

e0030939_23324216.jpg今回の閉店貼り紙は渋谷・旭屋書店。

8月の初旬 何のついでだったか忘れたが
渋谷に来た時
僕は「散歩の達人」のバックナンバーが
欲しくて旭屋書店に入った
確か 貼り紙が張られる前

ちょっと硬派な本があって
猥雑な渋谷駅と直結している割には
どこか格式があった本屋さんだ

でも あいにくバックナンバーは置いてなかった
「なぁんだ」

店員に一瞥すると、さっさとあきらめて別の本屋を
目指したことを覚えている
もう少し優しくしておけばよかった




e0030939_2332890.jpgこれで大盛堂書店に続いて老舗が消えてしまった

もう渋谷では本は売れないのか
書店より楽しいところはいくらでもあるけど
渋谷にはもう文化はないのか

この街は目まぐるしく流行が変貌していく発信地だけど
決して誇らしい街ではない

今日もスクランブル交差点には
車に気にも留めずにノロノロ歩く歩行者と
キャッチセールスと
ナンパ待ちの男たちと
退廃がせわしげに行き交っている

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by misejimai | 2005-10-02 22:56 | 本屋さん