店じまい・店びらき ~閉店のヘキレキ~

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カテゴリ:薬屋さん( 6 )


2009年 01月 31日

定期的な入れ替え

e0030939_18452437.jpg今日の店じまいは、今日で45年の歴史を終える、新宿・佐々浪(ささなみ)薬局。
名の由来は創業者が佐々浪富太郎というお人だからだ。
京都は河原町に本店を持ち、東京に支店を3店舗。
どの店も「最大よりも最良の薬局」を信条としていた。

























昔のワイドショーみたく、すりガラス越しでご主人は怒っていた。
「もともと大阪で薬局やってましてね。
 店をつぶしたんですよ。で心機一転、上京して支店やらせてもらって」

実際、支店もそんなに長くは続かないと思っていたらしい。せいぜい2~3年だと思ったら早や
45年。ほかの薬局にはなくてもここに行けばあるという品揃えにかけてはピカイチな店
だった。
今までいろんな店が出店しては消えた。
しかしこの2年の移りかわりは異常だったという。

「マイシティをルミネが買収したでしょ。
 ルミネ・エストに変わってオーナーが替わったんだよ。それから。
 えっ結構、立ち退きにあったんですかだって。
 結構なんてもんじゃないよ。2年で数百軒!
 うーん、なんかビルの対象年齢が14~25歳の若い人を対象にしてるんですよ。
 だから合わないところはどんどん、ね」

(このお店もそうなんですか?合わないからとかっていう理由で?)

「なんやしらんが、去年から言われてたんですよ」

この薬屋さんを取り囲むお店は、若い人向けの服のお店ばかり。
その店から否応なしに聞こえる、大音量の音楽の中、それに負けじと声を張るご主人。

「この音。だいたい、音がうるさいでしょ。もう、ついていけないんだから。やっていけない 
 よ。ブティックかなんかしらんけどうるさくてかかってきた電話も聞こえない。もっと業態
 変えればできるけど」

(あ~マツキヨみたいに?)

「(それには答えず)うちらみたいに細々とやってきた店に業態変えろなんてできっこない
 んだ。とにかく、うるさくて営業もできない。
 前はお店が終わるの9時だったけどビル自体の営業が1時間延長して10時になった。
 いや別にやらんでもええけどお客さんが少なからず来るからね。
 だから10時まで、やっていきたいけど大宮とか遠いところに住んでいる従業員はお店
 終わってなんやあと整理してたら終電終わったゃうからね。
 10時になってからずいぶんやめていった人も多いよ」

閉店はオーナーからの勧告もあったが、
お店としてもここでの営業は限界と感じていたようである。

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(けどお客さんはこういうおしゃべりを楽しみに来る人も多いのでは?)

「別に処方箋もらうところなんていくらでもあるし
 だいたい、店頭でしゃべるなんてそんな時代じゃない
 今度はもっと規制緩和で電気屋さんが薬置くっていうじゃない」


(この31日終えたら?)

「大阪帰ります
 ええ廃業でね。・・・うーんまあもしかしたらやるかも。
 でもとにかく、ここじゃやっていけないですよ」














下し気味なので下痢止めを買う。
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これを全部飲んだとして、調子がよくなったとしても
雪崩のように起きる閉店を食い止めることはもちろんできない。


相変わらず音楽とギャル店員の声が響いている。













ルミネエストのホームページによると、この1月31日だけで15店舗が閉店。
電話して受付のお姉さんに「けっこう閉まる店多いですね」と聞くと、
何のためらいもなく、あっさりと答えた。
「そうですね、定期的に入れ替えしてますんで」
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by misejimai | 2009-01-31 19:32 | 薬屋さん
2008年 09月 18日

パンダと精力剤

今日の店じまいは薬屋さん。
5月11日に閉まった、上野の西澤薬店。
ちなみに2階はレストラン「聚楽台」(こちらも4月に閉店)。

e0030939_3374410.jpgご主人は西澤三郎さん71歳。
北海道・旭川で製薬会社社員として勤めたのち独立、上京して薬屋を始めた。
独立したのは自分の力を試してみたいと思ったからだそうだ。
以来45年、みんなに笑顔を届けてきた。

4年前、建物の老朽化により全面改修の必要があることから全店舗に立ち退き命令が出た。
もともと50店舗あった1階のテナントは30になり、8になり、そして最後はこの薬屋と隣のカバン屋の2つが残る。

それまで退かなかったのはなぜか。
ここを閉めたとしてもどこか移転しようと考えて、どこか別のテナントを探していたからだ。

だが、ここ以上に立地がいいところが見つからず、
「結局自宅を店舗にすることにした」という。




さて。
携帯が普及する前、上野公園には「テレホンカード買ワナイ?」と話しかけてきたイラン人がいた。
彼らに代表される上野の胡散臭さを、この店はずっと引き継いでいる。

e0030939_2394661.jpgというのも、店の主力商品は写真でも分かるように精力剤。
鹿に海馬にオットセイ、絶倫、アカヒゲ、金蛇に
プリズナ・・・
目のやり場に困りそうなPOPが渦を巻く濃密な
空間に、歓びの夜を求める有象無象が集まって
いた。
そして使用後、再び精気をみなぎらせては店を
訪れていたである。
今回閉めることを聞きつけた常連客が全国から
西澤さんに会いに見にやってきたという。
あまりのお客さんの反響に営業を5日間延長し、
11日に閉めた。
















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僕の「この店にはよく来ていたんですか?」との問いに
「頼りになるのよ」と答えていた方の横顔をパチリ。


















上野動物園にパンダがいなくなって久しい
オスのリンリンはついに子供をもうけることなく逝ってしまった
パンダ不在の影響からか、入場者数は60年ぶりに年間300万人を割り、ついに200万人になる見込みだという
そういえば思春期のパンダに、交配の様子を映したビデオを見せて興奮をあおり、交尾に導くという話を聞いたことがある
過去、全国の男性諸氏を勇気づけてきた西澤さんに事前に相談すれば、パンダの子孫繁栄について何らかの手を打つことができたのかも知れない



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「改修後の2年後にはここに必ず戻ってくる」と僕に
約束してくれた西澤さん。
そのときパンダは上野にいるのだろうか。

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by misejimai | 2008-09-18 03:46 | 薬屋さん
2006年 12月 18日

人通りの少ない商店街

今日の店じまいは、目黒区目黒、油面(あぶらめん)地蔵通り商店街にある宮田薬局。
昭和28年創業の老舗の薬局。
おばあさんが1人で営んでいた。
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娘も薬剤師だったが、店を継ぐことはなかった。




















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おばあさんは2年前、年を取って店を続けることができなくなり、閉店。
今年84歳で亡くなる。


















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一代で終わった店の中は、薬が置かれたままだった。
物がない時代は置いてあるだけで売れたという。
















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この通りもどこかしら「諦め」が生まれている
一歩、大通りに出ればおしゃれな家具屋さんが並ぶ目黒通り

商店街とはもともと、気分が晴れやかになる、
ふわっと足もとが3cm浮くようなハレの場であったはずだ
楽しく暮らすその延長線上に、その場所に店を構えたいという
気持ちが生まれる
しっかり商売をすれば、きっとここにも人が戻ってくるはずだ
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by misejimai | 2006-12-18 01:49 | 薬屋さん
2006年 05月 23日

店の物置き化・餌場化

e0030939_3115520.jpg今日の店じまいは、江戸川西一之江にあるドラッグストア・フタバ薬局。
この店が閉まっても、別の店にこの薬はあるよという指示が書かれてある。


チェーン店
フランチャイズ
本来はみんなから頼りにされる薬屋
そういう店に対して何の想い出もないのは悲しい

街の個性が失われてみんな均質化していくのは、
そこに住む人の個性にも影響してくるのではと思うのだ

どの街にも駅前に大型スーパーができて、仕事帰りの人々が自動的に入ってく
カゴを持ってドアに飲まれていく


まんが喫茶と駐車場とパチンコ屋だけは健在で、
あとは24時間の弁当・惣菜屋に、やたらと安いラーメン屋、もちろんコンビニ

物が並べられ、何も言わなくても何でも買える物置き

食券を買えば食べ物を食べられる餌場

東京人は、そういう街に住んでいる

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by misejimai | 2006-05-23 03:14 | 薬屋さん
2005年 09月 06日

ある薬局の閉店

9月1日、東急池上線・ 荏原中延駅の商店街・昭和通りにある薬局が閉店。
80年の歴史に幕を閉じた。

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体調を崩し、80年続いた薬局を閉めることを決意した店主・窪田秀彦さん。

Q.薬局の人が体調を崩すとは皮肉なものですね。
A.それが人生ってやつ。

Q.今まで薬局をやってきてどうでしたか?
A.楽しかったよ。

Q.この1日に閉められたんですね。
A.うん。開店のときは嬉しいからワーッって早く開こうとする
  でしょ。でも閉める時はヤだから、整理がつかなくて
  遅くなったんだ。





体温計が入っていた木箱。他の道具なども1つひとつ丁寧に入れてきたという。
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常連のお客さんからもらったというメッセージカード。

聞き終えたとき、夕方5時を告げる「七つの子」が流れていた。
ちょっと涙が出た。
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by misejimai | 2005-09-06 01:12 | 薬屋さん
2005年 07月 26日

大晦日の閉店

広尾にある、いやあった店。
今ではどの店がその跡であったか判らぬほどに傷口は癒え、
そのとき虚ろだった空間にもハリが活気がみなぎっている。

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キリがいいと言ってしまえばそれまでだ。
12月31日、その薬屋はこっそり閉めた。

字が汚い。

今、
自分が張り紙に筆を走らせている内容が
まるでウソであってほしいかのように、
また辛さを忘れるかのように敢えて乱筆に
書いているのか。

だがどんなにツラクテ、バイクをフルスピードで走らせても、
一瞬は気はまぎれるが運命は変わらないように、
筆を乱暴に走らせても、そこには現実がある。

年が明けたら、その薬屋はもう営業しなくなる。
たった1日という短い時間で、
今まで「あり続ける」ものが「なくなり」、
かつては「あった」に変わる。

閉店を止めさせる特効薬は、
棚から見つけ出せなかったようだ。

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by misejimai | 2005-07-26 12:35 | 薬屋さん