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店じまい・店びらき ~閉店のヘキレキ~

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2007年 01月 24日

日本人の心の限界点

日本人の心の限界点_e0030939_2274799.jpg今日の店じまいは、六本木6丁目にある居酒屋「三州屋」(さんしゅうや)。



















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六本木の中でもひときわ「おやじ臭」がしていた。
アマンド横の芋洗坂を下り、吉野家の角を右に曲がった先にあった。

















閉店理由は立ち退き再開発のため、である。
この一帯は全てそうである。

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白壁の部分はタイ料理が食べられるバー・Castillo(カスティージョ)。
こちらは移転した。

その隣の店は「よかろう六本木店」。こちらはまたどこかで
再開したい旨が書かれてある。

その隣が「三州屋」である。





白い大きなのれんをかき分けて店内に入ると、客同士が向かい合わせになるような2つの直線カウンターが店の中央を貫いている。
その直線カウンターに仕切られるように、右には20数席のテーブル席、左には15人分ほどの小上がりの座敷席と両側に展開。

お通しは小鉢にたっぷりのシラスおろし。
三州屋の共通のメニューは「とり豆腐」。鶏の水炊きを丼鉢に盛ったもの。
メニューは極太の焼きたらこ。どじょうの丸煮など、どれも500、600円で済ませられる。

生玉子は無料なので、ご飯をもらって最後は玉子かけご飯でシメるというのが通の定番。



さて。
「全国居酒屋紀行」などを著している呑んべえのカリスマ・太田和彦氏の弁によれば、
「世の中の変化の速度が人間の限界点を超えつつあって、その変化に疲れた心身を浄化
 させる場という役割を居酒屋が果たしている」という。

この店のカウンターには足元に仕切り板がなかったので、うっかりすると反対側に座っていた
人の足を蹴ってしまい、お互いが会釈し、謝ることもよくあったという。
人にぶつかっても、靴を踏んでも何も言わない人が増えた今、
最も尊く、最も微笑ましい光景がこの居酒屋には残されていた。


女将は店を閉めて驚いたことがある。
こんなに店の再開を待ち望んでいる人がいるのか、と。
ありがたい一方で、「場所がない」ともつぶやく。
お客さんの声が消えない限り、またどこかで開くだろう。いやきっと開いて欲しい。
「そのときはお知らせします」という言葉が頼もしく聞こえた。

by misejimai | 2007-01-24 03:42 | 居酒屋


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