2006年 12月 21日

Gacktの愛したラーメン屋

今日の店じまいは、20日閉店した新宿歌舞伎町のラーメン店、みよし。
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本店は京都・三条木屋町で人気を誇ってきた博多長浜ラーメンの老舗である。
「餃子の王将」「天下一品」「ますたに」などと並んで、京都の学生の胃袋を満たしてきた。

この「みよし」、今まで支店は出さない方針を採ってきたのだが、
25年目の今年、初めて東京しかも激戦区の新宿・歌舞伎町に出店した。

開店当初は沿道に置かれた著名人からの花で埋め尽くされ、見る者を圧倒した。
花の贈り主の顔ぶれはYOSHIKI、hyde、ラクリマのTAKA、安室奈美恵、ISSA、西城秀樹、真矢、琴欧州、柔道・吉田秀彦、元阪神・川尻哲郎、さらにはシャア・アズナブル役の池田秀一・・・

店の出店にどんな謂れがあるのか分からない人にとっては、なぜこのような各界の著名人が
小さなラーメン屋に花を出すのか分からなかったに違いない。

実はみよし新宿店は、Gacktのたっての希望で初めて支店を出店したのである。

Gacktと言えば美貌を保つために炭水化物を摂らないことで知られ、ご飯は7年以上食べて
いないというストイック人間。

だが滋賀・京都での学生時代の10年間、彼がこよなく愛したのが、みよしの京都本店の
ラーメンであった。
「HEY×3」でも「京都イチの店」と絶賛していたほどである。
ちなみにお気に入りは、チャーシュー麺バリカタ。

Gacktの「みよし」への愛は、いつしか「東京でも食べたい」という願いへと変わっていった。
そして本店のオーナーに支店進出を許してもらうため、直接掛け合うという行動に出た。

もちろんオーナーは古くから彼が店の味を愛していることを知っている。
だが、オーナーは釘を刺した。
「中途半端な形で支店を出し、本店とは違う味が広まるのだけは辞めて欲しい」。
続いてオーナーは、ラーメン作りは大変だと懇々と話したという。
だが、それでもGacktの情熱は揺らぐことはなかった。

熱意にほだされたオーナーは支店を出すことを認め、ついに今年6月16日、歌舞伎町に東京第一号店がオープン。
店に花を贈った著名人は、Gakctと親交のあった人物たちばかり、というわけ。


・・・だが当のGackt、出店が決まった後は彼の実の姉が経営する会社に一任。
自分はまた再び、客の1人としてチャーシューメンのバリカタを頼む日々に戻る。

弟の想いを受け継ぐ形で経営に乗り出した姉だったが、実のところそれほど「やる気」はなかったらしい。
それは早くも店員の怠慢に表れる。
オーナーとGacktとの約束だったはずの「味を変に変えない」ということが守れなくなっていったのだ。
本店からの店員が“指導員”として新宿店を訪れると、本店とは違う味に変わっている。
指導後、一定期間を空けて再び訪れてみると、また違う味になっている。

本店はこれでは「みよし」の暖簾を掲げてもらうことはできないと、ついに閉店を申し入れる。
オープンからわずか半年で、Gacktの「東京でも食べ続けたい」という願いははかなく潰えるの
である。


最終日に訪れてみた。
Gacktファン通称Dearsの少女たち3人がラーメンそっちのけで話に花を咲かせていた。
他には黒服のお兄さん3人ほど。
24席ある店内はまさしく閑古鳥の鳴く状態であった。
全国に数多(あまた)いるであろうGacktファンも、さすがに彼を応援するのと、彼贔屓の店に
食べに行くというのは別次元のことなのであろうか。


スープは豚骨ベースで白濁しており、一見こってりラーメンの様。
しかし口にしてみると全然しつこくない。非常にまろやかだがコクがある。
本店ほどとんこつの臭みは無い(店員談)が、甘い。これを京風と言うのだろうか。
お好み焼きにしても、未だに「京風」が馴染めない。なぜか八つ橋を連想してしまう。
京都の人がこれを本場の博多長浜ラーメンと思っていると聞いたことがあるが、果たして。

麺はスープに合うはずの極細麺だが、あまり絡まない。
器は口が広くて底が浅く、空気に触れる面積が多いため、すぐスープが冷めてしまう。

またチャーシューが2枚と、メンマが数本、刻み葱少々が載っている。
サイコロ状に切られた小さなチャーシューも数個添えられている。

この「みよし」、10種類ものトッピングが無料で自由に出来る。
テーブルに胡麻、酢、ラー油、豆板醤、一味、高菜、紅しょうが、ヤンニンジャン、カレー粉、
天かすが小さな容器に入れられており、どれでも好きなものを入れることができる。

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ちなみに器の「みよし」という文字はGacktが書いた字である。












どうでもいいが、店員が、普通に接客しているときは明らかに関西圏のイントネーションではないのに、客の去り際だけ
「おおきに」と言うのがどうしてもいやだった。
味の総合点としては・・・飲んだ後にはいいのだろう。そう言えば木屋町も飲み屋街である。


e0030939_2232495.jpg新宿は現在、石原都知事のもと行われている「浄化作戦」によって遊興目当てのお客が激減している真っ最中。
しかも立地は苦戦が強いられる地味な場所。

思えば、新宿歌舞伎町の妖しさ=日本が「男」として輝いていた
象徴でもあった。
精巣が抜かれた脆弱な街と化した新宿に、MALICE MIZER時代ほどではないにせよ奇しくも中性的な人間が店の出店を熱望したのは単なる偶然か。

さて、今回閉店したみよしがある通りは「花道通り」。
ここを通ったことのある人なら分かると思うが、この花道通り、妙に
うねり、くねっている。
実はこの道は明治の中期まで、蟹川という川だったのだ。

新宿は、今日も蛇行しながら、「花道」を探している。






今日、本店に電話すると、「うちにはもう関係ない」と言われる。
「天下一品」や、「王将」、「たいめいけん」向かい側にある「ますたに」のように東京でも地盤を
固めることができた京都発のラーメン店。

今回、みよしは東京進出失敗によってミソがついてしまった。
そこにはまぎれもなく、1人の有名ミュージシャンの、青春時代を彩った味への想いが起因して
いる。
何気ない店の閉店にも、いろいろな人間模様がある
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by misejimai | 2006-12-21 22:21 | ラーメン屋


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